
Spring Bootは、JavaでのWebアプリ開発を圧倒的に効率化してくれる強力なフレームワークです。 しかし、「まず何を準備すればいいの?」「どうやって始めるの?」と感じる初心者も多いはず。 この記事では、Spring Bootを動かすための開発環境の構築方法を、IntelliJ IDEAとSpring Initializrを使って、ていねいに解説します。
環境構築が完了すれば、すぐにWebアプリを動かすところまで体験できます。さっそく始めてみましょう!
⚙️IntelliJ IDEAって何?なぜおすすめ?
Javaの開発には、コード補完やデバッグなどを助けてくれるIDE(統合開発環境)が欠かせません。中でもIntelliJ IDEAは、特にSpring Boot開発との相性が抜群です。
Springプロジェクトの自動認識、依存関係の補完、実行のしやすさなど、初心者にとっても扱いやすい設計になっています。 有料のUltimate版もありますが、無料のCommunity版でもSpring Bootアプリの開発は十分に行えます。
ただし注意点として、Spring InitializrをIDE上から使う機能はUltimate版に限定されています。 そのためCommunity版を使う場合は、Webブラウザ経由でSpring Initializrを利用する必要があります。
まだインストールしていない方は、JetBrains公式サイトからCommunity版をダウンロードしておきましょう。
🛠️IntelliJ IDEAのインストール手順:
- 公式サイトにアクセス:https://www.jetbrains.com/idea/download/
- 無料の「Community Edition」を選択してダウンロード
- ダウンロードしたインストーラを起動して、画面の指示に従ってインストール
- 初回起動時にテーマや設定を聞かれますが、基本的にはデフォルトでOK
- JDKがインストールされていれば、IDEAが自動的に検出します(後から設定変更も可能)
Javaのインストールと動作確認
Javaの公式ダウンロードサイト:
https://www.oracle.com/java/technologies/javase-downloads.html
Spring BootはJavaで動作するため、JDK(Java開発キット)のインストールが必要です。 現在(2025年時点)では、JDK 17が安定しており、多くのプロジェクトで利用されています。公式サイトからOSに合わせたインストーラを入手し、インストール後に以下のコマンドで動作確認を行いましょう。
java -version
「java version “17.x.x”」のような出力が表示されれば準備完了です。
🌱Spring Initializrとは?
Spring Bootのプロジェクトは、Spring Initializrというサービスを使うことで、テンプレートを簡単に生成できます。 これはSpring公式が提供している便利なツールで、必要な設定やライブラリを選ぶだけで、初期構成を自動生成してくれます。
IntelliJのUltimate版では、IDE上から直接Spring Initializrを操作してプロジェクト作成が可能です。一方で、Community版を使う場合は、Webブラウザからアクセスしてプロジェクトを生成・ダウンロードする必要があります。
WebからSpring Initializrを使う方法:

- ブラウザで https://start.spring.io/ にアクセス
- 以下の項目を設定(以下の表は、Spring Initializrの設定画面の対応項目です)
項目 | 説明 | 設置例 |
---|---|---|
Project | Gradle または Maven※1 初学者はMavenでOK、筆者的にはGradleの方が好み | Maven |
Language | Java / Kotlin / Groovy | Java |
Spring Boot | 使用するSpring Bootのバージョンを選択 | 3.5.3 |
Group | プロジェクトのグループ名 | com.example |
Artifact | アプリケーション名 | demo |
Name | プロジェクト名(Artifactと同じでOK) | demo |
Description | 説明文(任意) | Demo project for Spring Boot |
Package name | Javaのパッケージ名(通常はGroupとArtifactを組み合わせたものが自動入力) | com.example.demo |
Packaging | JarまたはWar(通常はJarでOK) | Jar |
Java | 使用するJavaのバージョン | 17 |
- 「GENERATE」ボタンを押すと、ZIPファイルがダウンロードされる
- IntelliJで「Import Project」→ ZIPを解凍したフォルダを選択して開く
💡GradleやMavenとは、Javaプロジェクトのビルド・依存関係管理・テストなどを自動化するための「ビルドツール」です。手作業では大変な処理を自動で行ってくれる、いわば開発の縁の下の力持ちです。
💡GradleとMavenの違いを一言で言えば、「Gradleは柔軟で高速、Mavenはシンプルで広く使われている標準的なビルドツール」です。
📕IntelliJでSpring Bootプロジェクトを開こう!
Webからダウンロードしたプロジェクトは、IntelliJ IDEAでそのまま開くことができます。 IntelliJの「Import Project」機能を使って、解凍したプロジェクトフォルダを指定すればOKです。 最初に依存関係のダウンロードが始まるため、少し時間がかかる場合もあります。今回はGradleとjavaでプロジェクトを作成して開いてみました。下記のようなフォルダ構成になっているかと思います。

Gradleでプロジェクトを作成したのでこのような構成になっています。一部ファイルは記載していませんがおおまかには上記のようになります。上図の左側はプロジェクトの設定ファイル群で、右側(src)は実際にコードを追加する場所になります。依存関係やバージョン関係等の設定はbuild.gradleに記載します。
🗂️それぞれのファイルとフォルダの意味
パス | 概要 |
---|---|
build/ | Gradleによって作られるビルド成果物の格納ディレクトリ |
gradle/wrapper/gradle-wrapper.jar | Gradleを自動ダウンロードして実行するためのJARファイル |
gradle/wrapper/gradle-wrapper.properties | 使用するGradleのバージョンなどの設定を記述したプロパティファイル |
build.gradle | Gradle用のビルド設定ファイル(依存関係やプラグインなど) |
gradlew gradlew.bat | Gradle Wrapperを起動するスクリプト(Linux/Mac用・Windows用) |
settings.gradle | プロジェクト構成を定義する設定ファイル(サブモジュールなど) |
.gitignore | Gitで管理しないファイルやフォルダを指定する設定ファイル(例:/build/ , .gradle/ など) |
src/main/java/... | アプリケーションのJavaソースコードを配置するディレクトリ |
SampleProjectApplication.java | アプリのエントリーポイント(mainメソッド) |
src/main/resources/ | 設定ファイルやテンプレート、静的ファイルなどを格納 |
application.properties | Spring Bootの各種設定を記述するプロパティファイル |
src/test/java/... | テストコードを配置するディレクトリ |
SampleProjectApplicationTests.java | アプリの単体テストを記述するクラス |
この構成のままで開発を進めて問題ありません。青文字がプロジェクトの「設定」に関するファイルとフォルダで、赤文字がプロジェクトの「コード」に関するファイルとフォルダです。必要に応じてファイルやフォルダを追加・整理していきましょう。
▶️ アプリを起動してみよう(Hello Spring Boot)
まずは何も編集せず、IntelliJの左側の src/main/java/のフォルダにあるmainメソッドを持ったjavaのファイルを開いてみましょう。 このクラスには、次のようなコードが自動で入っています。
package com.example.SampleProject;
import org.springframework.boot.SpringApplication;
import org.springframework.boot.autoconfigure.SpringBootApplication;
@SpringBootApplication
public class SampleProjectApplication {
public static void main(String[] args) {
SpringApplication.run(SampleProjectApplication.class, args);
}
}
この記事ではSampleProjectApplicationとなっていますが、ここはアプリケーション名に「Application」が後ろについた名前になります。このファイルを実行してみましょう。このファイルの左側に小さな実行ボタンがあるのでここをクリックすると実行できます。

実行すると下記のようなログが出力されます。
. ____ _ __ _ _
/\\ / ___'_ __ _ _(_)_ __ __ _ \ \ \ \
( ( )\___ | '_ | '_| | '_ \/ _` | \ \ \ \
\\/ ___)| |_)| | | | | || (_| | ) ) ) )
' |____| .__|_| |_|_| |_\__, | / / / /
=========|_|==============|___/=/_/_/_/
:: Spring Boot :: (v3.5.3)
2025-06-22T17:56:29.448+09:00 INFO 11688 --- [SampleProject] [ main] c.e.S.SampleProjectApplication : Starting SampleProjectApplication using Java 17.0.6 with PID 11688 (/Users/tamon1028/Desktop/SampleProject/build/classes/java/main started by tamon1028 in /Users/tamon1028/Desktop/SampleProject)
2025-06-22T17:56:29.453+09:00 INFO 11688 --- [SampleProject] [ main] c.e.S.SampleProjectApplication : No active profile set, falling back to 1 default profile: "default"
2025-06-22T17:56:29.896+09:00 INFO 11688 --- [SampleProject] [ main] c.e.S.SampleProjectApplication : Started SampleProjectApplication in 0.87 seconds (process running for 1.228)
プロセスは終了コード 0 で完了しました
この時点ではまだWebサーバーやコントローラーは用意していないため、目に見える動作はなく即時終了しますが、エラーが出ずに完了すれば準備はOKです。
⚠️よくあるトラブルとその対処法
環境構築中にありがちなトラブルと、その対応方法も紹介しておきます。
- JDKが見つからない
- IntelliJの「Project Structure」でJDKを明示的に設定しましょう。
- アプリが起動しない / ポートが使われている
- 他のプロセスでポート8080が使われていないか確認。変更も可能です。
- 依存関係のダウンロードでエラー
- インターネット接続を確認し、必要ならIDEを再起動して依存関係を再取得しましょう。
- GradleやMavenの際リロードボタンを押してみましょう。
まとめ
Spring Bootアプリを開発するためには、まず開発環境の整備が欠かせません。 本記事では、初心者にも扱いやすいIntelliJ IDEAの導入方法と、Spring Initializrを使ったプロジェクトの作成手順を紹介しました。本記事で無事にプロジェクトが作成・実行ができました。
次回の記事では、Spring Bootプロジェクトの構造に焦点を当て、ディレクトリ構成や設定ファイルの役割を詳しく解説していきます。 プロジェクトの「全体像」を理解することで、今後の開発がぐっとスムーズになります。